"愛してる"は蝶よりも花よりもずっと脆い。
「マジで理解追いつかないから。帰る」

「俺から逃げられるとでも? あ、それともまた担いでほしいの?」

「そんなわけないでしょ!」

「じゃあ黙って話を聞け」

ほんと、こいつのペースに巻き込まれてる自分にイライラする。

話聞かないとめっちゃ脅されるし、逃げられないしほんと最悪。

「あのさ、ずっと気になってたんだけどさ。なんで幼馴染みっていう設定なわけ?」

「会社の部下と急に結婚しましたなんて言ったら、変に勘ぐるやつ出てくるだろ。だったら、昔から付き合っててこの間入籍したの方がマシだろ」

「そこまで念入りに考えてたとはね…」

「パーティの度に色んな女に言い寄られんのうんざりなんだよ。ベタベタベタベタ気持ち悪い」

「あんたのその本性、みんなに見せてあげたいわ」

「とりあえず時間だ、もう行くぞ。今日からお前は如月だからな。忘れんなよ」

忘れんなよって言われたって、私は如月になるつもり全然ないし。

妻役だって流れで引き受けることになってるけど、引き受けるなんて一言も言ってないしね。

そこから再びあれよあれよという間に車に乗り、パーティ会場に連れて行かれた。

どこを見ても偉そうな人ばかりだし、私すごく場違いなんだけど?

ものすごく綺麗に着飾っている人たちに馴染める気が一切しない。

「いいか、お前は何も言わずただ俺と腕を組んで歩いているだけでいい。余計なことは言うなよ」

「腕を組むなんて絶対に嫌よ。パーティに参加するのだって、まだ同意してないし」

「ここまで来てそれを言うか?いいから黙ってついてこい」

それからまたしばらく抵抗したけど、社長に適うわけもなく腕を組んで歩いている私。

こんなところ、知り合いに見られたら誤解されるじゃないの。

「腹減ってないか? 何か食べたいなら取ってくるけど」

「今は空腹よりこの現状をさっさと切り抜けたいわ」

「まだまだパーティは長いし、何か腹に入れとけ。挨拶の時に倒れたら恥かくぞ」

「私も前に出るの!?」

「俺の妻として紹介するんだから、当たり前だろう。逆になぜ前に出なくていいと思ったか教えてくれ」

「この度結婚(嘘)しました〜みたいな軽いノリで言うのかと思って」

「本当に馬鹿か、お前は」

そんなやり取りをしていると、綺麗に着飾った女性たちから話しかけられる社長。

隣にいる私なんか一切目に入ってないって感じで、リアル透明人間なう。
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