"愛してる"は蝶よりも花よりもずっと脆い。
「んん…ここどこ…」

変な男たちに眠らされたところまでは、覚えてるけどその後の記憶が一切ない。

こんな真っ暗なところに連れてきて、一体何する気なのよ。

普通に怖いし口もガムテープで止められてないけど、目隠しも取って欲しい。

「ふんふんふーん♪ そろそろ目覚めたかな」

「誰なの。この目隠し取りなさいよ」

「あら、目覚めてたじゃん。悪いけど、その目隠しは絶対取れないよーん」

「あなたたちがやってることは犯罪よ。さっさと目隠し取りなさい!」

「ごちゃごちゃうるせぇな」

「ゔっ…」

この男、鳩尾に蹴り入れやがった。

顔じゃないだけいいけど、そんなところに蹴り入れられたら吐くだろ。

「おい、やばいって!社長の秘書にバレた!」

「マジかよ。おいお前、余計なこと言うんじゃねぇぞ。何言われても、私の意思で来ましたって言えよ」

「うるせぇな。そんなこと言うわけねぇだろ!」

「威勢だけは十分だな。さ、秘書さんのお出ましだぞ」

社長の秘書って、さっき耳打ちしてるところをチラッと見ただけだけど、どんな人なんだろうか。

あんまり接点ないし、噂で社長の秘書は穏やかイケメンって聞いたことあるけど大丈夫かしら。

男たちに負けて吹っ飛ばされたりしたら、私の責任だよね。

えぇ、秘書さん大丈夫かな。

「あなた方、女性をこんなところに監禁していたんですね」

「監禁だなんてそんな、人聞きが悪い。彼女が自らの意思で俺らについてきたんですよ」

「その割には、目隠しなんかもしてるみたいですが」

「これはプレイの一貫ですよ。深い意味はありません」

「では、この女性をお借りしてもいいですか?」

「いいわけねぇだろ? 秘書さんはさっさと社長のところ戻れよ」

「この女性と一緒に帰らなきゃいけないんですよ。頭が悪いあなた方には分かりませんかね」

「いいから帰れって言ってんの。めんどくせぇな」

「めんどくせぇのはお前らだろ。余計な仕事増やしやがって、俺は暇じゃねぇんだよ」

秘書さん、意外とオラオラ系なの?

え、今の声って秘書さんの声だよね?

私と一緒にあっさり捕まっちゃいそうとか思って心配してたけど、そんな心配いらなかった?

「お前らが監禁してるその女性は、社長の大事な人なんだわ。あんまこういうことしたくねぇんだけど、物分り悪いみたいだから仕方ねぇか」

秘書さんのそんな声が聞こえたかと思えば、何発か殴る音と男たちのうめき声が聞こえた。
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