猫をかぶった完璧イケメンくんが、裏で危険に溺愛してくる。
「え、電車……」
わたしの声に反応して、男の子がこっちを向いた。
「あぁ、僕のことなら気にしないでください」
「も、もしかして降りる駅ここじゃなかったですか?」
「うーん、どうでしょう」
いやいや、はぐらかしてる時点で、ぜったいここじゃなかったよね?
もしかして、わたしを気遣ってわざわざ一緒に降りてくれた?
でも、ボタンに髪が引っかかってたことも、この駅で降りたいことも……何ひとつ言ってないのに。
まさか、それにぜんぶ気づいて……?
いろいろ考えてる間に電車が来た。
「それじゃ、気をつけて帰ってくださいね」
「え、あっ……まっ――」
引きとめようとしたとき、もうすでに男の子は電車に乗っていた。
男の子は電車の中から、笑顔で手を振ってくれた。