喫茶店の悪魔
「料理は俺が作るんだから澪わかんないじゃん。俺ひとりでいいから」
「…まあそうですね。わかりました。」
確かに、私は昼食も夕食も料理を作らない。担当はいつの間にか天さんだ。
スーパーでも天さんの後ろで突っ立っていることしかできないことは容易に想像できる。
「部屋の片付けとか頼んだ」
「わかりました。まあ綺麗ですけど」
とりあえず迷ったら床に置くような天さんの部屋は汚かったが、私が最近家にいるので、綺麗が保たれている。
「じゃあ、行ってらっしゃい、です」
「そこは行ってらっしゃいでいいのに。んじゃー行ってきまーす」
どこか行ってらっしゃいと言えない私を前に、外に出ていく天さんを確認し、そしてドアを閉めようとドアノブをひく。
「ええっ!!!!東條さん!?」
「…え?」
どこか聞き慣れた声が聞こえる。
閉めようとするドアとの間に、驚いた表情で私を見る、白浜さんがいた。買い物帰りなのか、ビニール袋を持っている。
「ここの3階俺ん家」
「ああそうなんですか」
「やっぱあの人と住んでんだねー?」
うっ…そうか、丁度天さんとすれ違って階段を上がってきたらしいな。