喫茶店の悪魔
言葉が出てこない。わからない。
懸命に、適切な言葉を頭で作り出す。
「どうして、わかるんですか?私の心の中なんて今まで誰にもバレなかったのに、あなたにはどうしてわかるんですか。」
大丈夫か?と言われると、私は大丈夫ではない、と思う。
それを、この金髪さんにバレた。
膝の上に置いていた手をぎゅっと握りしめる。頭がクラクラする。
「あのさー、俺が全部わかってるつもり?」
「…?」
「澪の嘘が下手とかそんなの関係なくて、ただ、俺はそう思っただけ。澪のこと全然知らないからわかんないに決まってんだろ」
「……そうですね、すみません。」
素直に頷く。ほんとだ、その通りだ。
何を恐れてるんだろう。心が読まれること?大丈夫かって心配されること?
「そんなに誰かに自分の気持ちがわかられることとか、心配されることが嫌なの」
「…違います。…、」
ああ、言葉が全く出てこない。
昔に戻ったみたい。
「よし、22の俺が言おう。口調、声の色、表情、仕草…。そんなんで、どんなに嘘が上手な人でも、心は簡単に読まれることは、当たり前である」
「…はい。」
「嘘とか何があっても、平常に突き通すのはやっぱ無理なんだよな。難しい」
どこか自分に噛み締めるような、優しい口調に変わってきた。