喫茶店の悪魔
「起きた?今日土曜日だし、俺は休み」
「土曜日……そうですか。」
「うん。熱測ってみて」
ゆっくりと上半身を起こして、差し出された体温計を受け取り、見られないよう脇に挟み測ってみると、37度前半まで下がっていた。
「おー下がってる。ただの風邪でよかった」
ふっと金髪さんは笑った。その笑顔を見ると、益々帰りたくない。
あんな家、帰りくない…
すると、私のスマホを差し出してきた。
どうせ、帰れっていうことなんだろう。
「澪。また、喫茶店で会おう?毎日行くし。バイト、やめないでな」
「はい。」
寂しいのも家に帰りたくないのもバレないように無表情で頷いた。
帰りたくない、と思ったとしてもどうせ叶わないだろうし考えるのはやめにしよう。
―神様と時間はそう。酷い奴らだから。
「ほんとに、ありがとうございました。」
「うん、もう大丈夫?」
「はい。もう体中の痛みも熱さもないし、クラクラもしません。スマホで検索すれば道もわかるので帰れます。」
「よーかった。まだここいてもいいけど、帰りたい時に帰っていいよ。早く帰りたい?だろうし」
「はい。でも、もう帰ります。」
「……そう?じゃあばいばい、店員さん」
澪から店員さんに戻っている。