喫茶店の悪魔
その事が1番悲しいと思った。
「さよなら。……金髪さん、お客さん」
ゴムで髪を簡単に結び、小さく頭を下げお辞儀をした。扉を開けて部屋を出た。
ここ、こんなマンションだったんだ。
この、アパート?マンション?は建ったのが最近なのだろうか。ベージュ色で床も壁も隅々まで綺麗だ。
金髪さんの部屋は、1階の端っこだった。もう来ることはないだろうに、頭は勝手に記憶してしまう。
地図アプリで検索すると、すぐに最適な家への道のりがでてきた。従って前に進む。
―いつもの、見慣れた一軒家へ着いた。
本当に家の扉を開けたくなくて、完全に変人だがウロウロと家の周りを歩き回る。
だけどどうせ帰るのなら、早く帰った方がいい、のかな。
開けたくもないドアを開ける。
2階にはドアを開ける音は大きくしているはずなのだ。だけど今日も、誰にも迎えられることはなかった。
別に会話したくないけど、今日ぐらい駆け寄ってきてほしかった。電話では心配してたのにな、なんて思う。
2階への階段を上がる。