喫茶店の悪魔
「は…」
呆然と部屋全体を見渡す。
踏み場のない床。なにかの紙やポスターや缶やカップラーメンの箱。よく見たらお皿やコップの食器まで落ちている。
あの綺麗だった部屋を頭の中で比べる。
あんなに頑張って掃除したのに…
「1週間くらいしか経ってないのに何があったんですか?強盗でも?」
「ん、なんのことー」
すると、ベッドに飛び乗って顔を枕につけ、うつ伏せ状態になっている。
ものすごく適当に答えてるみたいだ。殴りかかってやりたい。
「この部屋のことですけど」
「だから言ったじゃん?澪が来てくれたら部屋綺麗にしてくれるし俺にしちゃー楽って」
「は?意味わかんないんですけど。」
この部屋をまた綺麗に片付けるとなったら気が滅入って仕方がない。
そんなことを私に押し付けようとして住むことをオッケーしてくれたのだろうか。ますますと意味わかんない。
「俺このまま寝るからー適当にやっといてー何でも使っていいよー」
「ええ…もうっ…」
はぁーと強くため息をする。
金髪さんは何も言わなくなった。うつ伏せに倒した後ろ姿の背中だけが上下に静かに揺れている。
なんだか遊び疲れて寝てしまった小さな子供のように見えた。静かにそっと、床に落ちていた布団をかけてやった。
なんだこの人。まあ、優しい人なんだろうけど。