星愛空~届かなかった手紙~

「………沙浦さんっ!!!」

階段をおりている時ー…
私は看護婦さんに呼び止められた。

「……はい……」

この赤くなった目と鼻を見られたくない……

「沙浦さんっ!探したわよー…!!」

看護婦さんは急いでいる様子だった。

「………実はねー…
彼、ずっとあなたに手紙出してたのよー…」

ーーー手紙?!

………おくられてきてー…ないよ?

「手紙……?!」

「そう。届くはずのない手紙ー…。」

看護婦さんの
言っていることは何か奥深そうだった。

「ここに入院してからずっとよ。
ルーズリーフに何枚も何枚も………。
でもね、彼は一度も手紙の封筒にあなたの住所をかいてなかったのよー…。
封筒にはただ、沙浦 華波さんへ。
だけしかかいてなかったのー…。
……一通目の手紙は、私が確認してなくて、
住所を記入していないまま、
郵便局に持って行っちゃって………」

私は看護婦さんの話の続きを聞いた。

「でね、私、ある日、彼に聞いてみたのー…。
“どうして送り先の住所をかかないの?”
って…そしたらね、“届くから”って言ってそこから何も話さなくなっちゃって…………。
私も手紙を出す度にだまにしか見せない本当の笑顔で“郵便局に届けてくれたっ?”って聞いてきて、とても、
“住所がないと届くわけない”なんて言えなくて…………。」






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