Fortunate Link―ツキの守り手―
「…………」
俺は唖然と自分が打ち放ったものの消えた先を見続けていた。
海上は何事もなかったかのような静けさを取り戻している。
「……いやいやちょっと待て」
確かめるように自分の手元をふと見る。
「いくらなんでも飛びすぎだろ。あれは」
自分でも信じられない。
手が少し震えている。
「……お前……、何したんだ…?」
アカツキも信じられない様子で問い掛けてくる。
「……俺も分からん…」
茫然と手に握るラケットを見下ろす。
ガットは見事に破れ、全面的に張り変えなければいけないような有様だ。
「……なんか、急に体が軽くなった気がして…。そしたら周りに風が起こって…」
船内の客達がざわつく声が遠くに聞こえた。
今の爆発に驚いたのだろう。
ほっとするのと同時に、視界が急速に閉ざされていくのを感じた。
とっさに頭を押さえた。
「……どうした? 」
傍にいるアカツキがきいてくる。
「…いや。
なんかすごく疲れた気がして」
まるで慣れないことを全力で成し遂げたあとのような…。
「…おい、大丈夫か?」
「…うん、それより…」
アカツキの少し傍で伸びている船員を指差す。
「まずはその人を運ぼう。
周りの人に事情説明とかするのはその後だ」
アカツキにそう言ってから、船の外に広がる海を見た。
周りに船とかがなくて、本当に良かったと思う。
近づく港の灯りはまだ少し遠かった。