Fortunate Link―ツキの守り手―
『シュンヘ
置き手紙でごめんなさい。
仕事の都合で急遽ウラジオストクの方へ行くことになったの。
しばらく家を留守にするけど後のことはよろしくね』
そう書かれていた。
よく見るとまだ下の方に文章が続いている。
『追伸、フィリピンで知り合った青果会社の山田さんがバナナを一箱送ってきたので腐らないうちに食べ切ってね。』
ふと、手紙と共に置いてあった段ボール箱を見下ろす。
「……バナナ一箱って…」
24時間走り続けるアスリートじゃあるまいし、この大量のエネルギー源をどう消費せよと言うんだ。
てかまず山田さんって誰だ?
よくよく見ると、まだ文章は続いていた。
『追伸の追伸、しばらく生活費を入れられそうにありません。
私の居ない間、まぁなんとか…上手いことやりなさい』
「……」
……まぁなんとかって。
一番重要なとこを投げやりにすな、こら。
前にも言ったと思うが、うちは母子家庭で生活のすべてが母さんにかかってる。
母さんが無理となれば、当然その責務は俺に降りかかってくるわけで…。
つまり大ピンチだ。
手紙はまだ続いていた。
『追伸の追伸の追伸、私がしばらく家を空けることはアカツキちゃんにも伝えてあります。頼りない息子ですが尻に敷いてやってね、と言っておきました。』
「……あの親は何がしたいんだ…」
悪意があるのか、天然なのか、どっちもか。
ぐしゃりと手紙を握りしめる。
その時、ピンポーンとインターホンの音が鳴り響いた。