Fortunate Link―ツキの守り手―
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リビングへと入ってきたアカツキは、この家の主のごとくソファーにふんぞり座り、テレビを付けた。
画面にはいつも通りの朝の番組が映し出されている。
特に目新しい大きなニュースも無く、政界のいざこざとか、政府の打ち出した金融緩和政策がうまくいってないだとか、そんな後ろ暗いニュースばかり。
「最近こんなんばっかだな。くだらねぇ」
アカツキはテーブルに盛っているバナナの束から一本千切り、両端を掴んで真横に引っ張った。
バナナは綺麗に真っ二つに分かれた。なかなか通な食べ方を心得ているようだ。
「国の金融事情より、今、家に生活費が無い事の方が俺にとっては差し迫った問題だがな」
財布の中身を確認し、戦々恐々としながら俺は呟いた。
どうしよう。漱石先生が一人しかいないんだが…。
「どうするんだ?それで」
テーブルに置いていたあの手紙を手に取り、アカツキは訊いてくる。
「…んー。
駅前のファミレス、バイト募集の貼紙してた気がするから帰りにでも寄ってみるか」
俺は茶色の染みが点々と出て程よく熟したバナナを見つめながら呟いた。
「ふぅん。バイトか…」
アカツキが妙に興味深げに言う。
「……シュンが始めるなら私も始めてみようかな」
いきなりそんなことを言い出すアカツキを俺はまじまじと見つめた。
「…え?なんで?」
思わず訊いてしまう。
「だって自分の自由に使えるお金が増えるだろ」
アカツキは答える。
まぁ、確かにそうだが。
「……で、自由なお金で何か欲しいもんでもあるのか?」
「……そうだな…」
アカツキは天井を睨み、しばし考え込んだ。
「まずは二輪免許取る為の資金とか」
「………」
別に女子高生らしい答えを期待していたわけじゃないが、予想の斜め上を行ったな…。
「……そ、そうか。
ま、まぁぼちぼち頑張れや」
「――何を言う。
お前の行こうとしているファミレスのバイト、私も行こうと思っているんだが」
アカツキはそうのたまった。