Fortunate Link―ツキの守り手―
すると相手チームの野鳥ウォッチングの会会長が高らかと嘲笑い始めた。
「ふははは!見ろ!敵はもはや絶滅寸前のトキだ!」
……例えが無理やりだ。
会長はわざわざ双眼鏡を持ち出してこっちを見ている。
そんな事しなくたって見えるだろ、俺の姿ぐらい。
「しかし日本産トキはもうとっくに幻のもの。だから滅ぼしても問題ナッシング!
やっちまえ~!もうすぐで念願の部室ゲットだぜ!」
色々と問題ありすぎる発言を叫ぶ会長。
しかし、
「うぜぇっ」
アカツキがキレ、会長の双眼鏡をむんずと掴むと叩き割った。
奴には敵・味方の概念は無いようだ。
「あぁっ!僕の大事な…」
会長の嘆きの声がむなしく響き渡る。
ご愁傷様、と心の中で呟いておく。
「おい、シュン。
歯ぁ食いしばってそこに立っていろ。動くな」
ボールを持って狙いを定めたアカツキが無体な要求を突きつけてくる。
「出来るか!んな事!」
それは遠まわしに死ねと言っているようなもんだぞ。
しかし数秒と間を空けずに剛速球が俺に向かって突っ込んでくる。
こうしちゃいられない。
何もしなければ死ぬ。
味方は使えん奴らばっかりだし。
潰えていた筈の俺の闘争心に火が点いた。
「うらぁっ!」
回転をつけた蹴りを飛んできたそれにぶつける。
と同時に横から飛んできたボールを体を捻りながら避けた。
蹴り飛ばしたボールは真逆のベクトルを得て、相手チームのコートへと跳ね返っていく。
ドゴォォォッと鈍い音を響かせ、相手チームの会長さんの腹にめり込んだ。
「ぐふっ」
野鳥ウォッチングの会の会長さんは息を漏らしてその場にバタリと倒れた。