Fortunate Link―ツキの守り手―
明るさに慣れてきた視界が捉えたのは真っ白な天井。
どうやら自分はベッドの上で横になっているらしい。
視覚の次に働きだしたのは嗅覚。
鼻腔を突き刺すような刺激臭を感じる。このどこか懐かしい匂いは消毒液の香りだな。
…そして、
視覚と嗅覚が結びついて得られた結論。
――ここが保健室だということ。
このまま寝ていてもいいが一応状況確認のため起きてみようかと思う。
上体を起こすべく手をつこうとして――…。
その手が”ふにっ”とした柔らかい感触を捉えた。
しかもそれは柔らかいうえに暖かい。
「……ふにっ?」
訝しみつつ、布団の中をあらためる。
そこには……、
「ひゃっ!」
目が飛び出るかと思った。
『驚き』という表現の範疇ではない。
だってそこには有り得ないもの…いや有ってはならないもの…正しくは有ってはならない”人”が居た。
彼女はごそごそと布団の中で身じろぎした。
「…あっ。やっと起きましたかー」
密着したまま、むにゃむにゃした口ぶりで言ってくる。
そこに居たのは、黒髪に一筋だけ入った金色のメッシュが特徴的な、いつぞやの保健医だった。