Fortunate Link―ツキの守り手―
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(――シュンと、あいつがイベント会場から消えた…)
白石星羅は会場の控室から飛び出して、駅前の通りに居た。
辺りをきょろきょろ見回す。
「…どこに行っちゃったんだろう」
なぜだか嫌な予感がしていた。
(――あいつは異常にシュンのことに興味持ってるみたいだったし…)
胸を押さえ、あのオレンジ髪の男のことを思い出していた。
ともかく、彼女にとってシュンのことが心配だった。
必死にその姿を求めて、走り廻る。
「――星羅(セイラ)」
その時、突然、自分の名を呼ぶ声が響いた気がした。
はっと、足を止め、彼女は周囲を見回す。
けれど辺りにはにこちらを向く人の姿も無く、縦横無尽に行き交う雑踏があるのみだった。
(……気のせい…?)
そう思いかけたその時、
「星羅(セイラ)」
もう一度、はっきりとその声が聞こえた。
「……えっ」
星羅はある一点を見て、立ち止まった。
彼女の知る人物が通りの角を曲がったように見えたからだった。
(……嘘…)
疑いながらも、彼女の足は自然とその姿を追っていた。
角を折れ、狭い道を走る。
しばらく行くと、そこにぽっかり空いた空き地があった。
そしてそこに長い黒髪の少女の後ろ姿があった。
星羅がその背に近づこうとすると、彼女は振り返った。
「……あ…」
星羅は立ち竦んだ。
相手の顔を見つめ、信じられないようにまじまじと見つめた。
「……お姉ちゃん…?」
そう呟くと、長い髪の少女は微笑んだ。
その顔立ちはまるで星羅と瓜二つで、まるで鏡越しに相対しているように錯覚しそうなぐらいだった。
「……な…んで……?」
星羅は震えを抑えながら、呟いた。