Fortunate Link―ツキの守り手―
翌朝。
ジリリリリリ…とけたたましく鳴り響く目覚まし時計をぶっ叩いて黙らせた。
そういえばアカツキの奴は毎月一個は目覚まし時計をぶっ壊しているらしく、前なんか「どこかに超合金製の時計は売ってないものか」と真剣になって訊いてきた。
まぁそれはさておき。
「…んー…。にしてもだるい…」
昨日は新しく始めたバイトの初日だったので、慣れないことをしたせいか、朝になってもまだ疲れが取れていない。
「早く慣れないとな」
言い聞かせるように呟く。
簡単に根を上げるわけにはいかない。自分自身の生活がかかっているのだから。
前にも言ったかもしれないが、うちは母子家庭で母親の収入でなんとかやっているわけだが、その母さんが少し前からロシアへと出向いたまま戻ってこない。
そのうえ、しばらく生活費も入れられないと言うのだ。
これは俺にとって大変なピンチである。
このピンチを乗り越えるべく、俺が昨日からバイトを始めたという理由に行き着く。
「…はぁー」
口からはため息しか出ない。
一階へ降りて、台所でコップに水を注ぎ、一気に飲み干す。
そして幾分か目が覚めてきたところで、冷蔵庫を開ける。
「うわぁ…。何もねーや…」
そういえばそうだった。早くお金入らねーかな。
「バナナならあるぞ。腐りかけだけどな」
横からにゅっと茶色に変色しかけているバナナを差し出される。
そうだ、バナナがまだあった。
母さんの知り合いが阿呆ほど大量に送ってきたわけだが、色々あってなぜかそのほとんどを白石さんに買い取られた。
しかし買い取ると言われて強引に渡されたあの大金にはまだ手をつけられていない。なんだか怖くて。
それでもまだ例のバナナは残っていた。
「あ、こりゃどーも…」
反射的に差し出されたバナナを受け取る。
そこで、ん?と違和感に気づいて横を向く。
そこには制服のアカツキがこの家の住人のごとく至極当然の顔をして立っていた。