Fortunate Link―ツキの守り手―


アカツキは少し驚いたように俺のほうをじっと見てきた。
だけど、すぐにふいっと視線をそらして、

「…誰がお前なんかに言うか、馬鹿」

相変わらずの憎まれ口をたたき、少し早足になって俺の斜め前を歩く。

「ウザ!バーカ!」

甲高く九兵衛も叫ぶ。

「…………」

俺はアカツキの背中をぼんやりと見ながら、咄嗟にらしくない言葉を吐いてしまった自分に少し戸惑っていた。


(……俺のほうこそどうした?)


――もっと、自分を頼ってほしい。
なんて、アカツキに対してもどかしいくらい強く思ってしまうなんて――。





時間に余裕をもって学校に辿り着いた。

昇降口で靴を履き替え、朝の騒々しい教室内へと足を踏み入れる。

「グーテンモルゲン。守谷クン」

いきなり前から妙なテンションで挨拶してくるのは、年中頭の中が晴れ男のクラスメイト。サトシだ。
一緒にやって来た俺達二人を見やって、にやにや笑い始める。

「ははぁー。朝から一緒に登校とは仲がよろしゅうことで」

「お前こそ朝からヘラヘラして…。
変なものでも食ったか?」

「いやー。お前もなかなかやりよるのう、と思って」

「何が言いたい?」

勘違いを肌で感じながら訊き変えす。

アカツキはサトシのほうをチラッと一瞥しただけで、自分の席の方へと去った。

サトシはそれを横目で確認しながら低い声で言ってくる。

「だって前に白石さんと公衆の面前でぶっちゅーなキスしてたから、てっきり本命は白石さんかと思ってたんだが」

「…やなことをほじくり返すな」

せっかくあの記憶はコンクリート詰めにして遠い忘却の彼方の海に葬り去ろうとしていた最中だったのに。

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