Fortunate Link―ツキの守り手―


奴はひとしきり笑った後、

「いやぁ。こんなにも熱烈歓迎してくれるとは、嬉しいわ~」

少しも気分を害した様子も無くそう言った。

…どうやったら、そういうポジティブシンキングになれるんだ、と逆に感心してしまう。


「俺の名前は瀬川蓮。気軽にレンって呼んでや」

唖然としているクラス全員を見据えて告げる。
そしてまた、全員がその目から離せないようだった。


「…今後ともよろしゅうな!」

人当たりの良さそうな笑みを浮かべて…。


俺はその現実を目の前に、何もできずに立ち尽くすだけ。


「……マジかよ」


一体何が起ころうとしているのか。



――風雲急を告げる…

嵐の予感がした。





4時間目の終了を告げるチャイムの音ともに自然と深い溜息が付いて出た。
ぐたりと机の上で伸びる。

その向こうで、すっかりクラスに溶け込んでいる瀬川蓮の姿が見えた。
それを目にして、ますます気分が鬱になっていく。

こんなにも占いがドンピシャ当たる日が来るとは。


「うはぁ~…」


しかしそれにしても悪夢のような現実だ。
誰かの陰謀としか思えない。
呪われているのか、これ。


と、そこに近づいてくる影。
顔を上げる。

「…なぁ、お前あの編入生と知り合いなんじゃねぇの?」

やって来たサトシが訊いてくる。

「だから知らんと何度も言ってるだろ」

心底うんざりとしながら答える、

休み時間のたびにこうやって訊いてくるが、しらを切り続けている。
しかし、いくらサトシがお気楽馬鹿とはいえ、俺達が赤の他人ではない事ぐらいは気づいているのだろう。

現に俺も奴が教室にやってきた途端に妨害を加えているし、奴のほうも「シュン」と馴れ馴れしく何度もこっちを呼んでくる。迷惑この上ない。

「そういえばさ。
さっき噂で聞いたんだけど、本日付で一つ上の学年にも一人、編入生が入ってきたらしいぞ」

「何だ今日は。厄日か」

「いやいや、こっちは吉報だ」

「…はぁ?」

サトシは興奮した様子で目を輝かせながら言う。

「何せその編入生、すんげぇ美人だって噂だぜ?」


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