Fortunate Link―ツキの守り手―


とっさの判断で横っ飛び、アカツキを抱え込みながら地面を転がった。

何かが床に激突する音が響く。

さっき俺のいた場所に、飛んできた鎖鎌が深々と突き刺さり、穴が穿(うが)たれていた。

「…やば~」

もし避けてなかったら、どうなっていたことやら。

俺はその恐ろしい光景を横目で見ながら、背中に冷や汗が流れるのを感じた。


そっちに気を取られていると、

「…てめぇ、死にてぇらしいな」

下から膨らむ殺気に、はっと今の状況に気づく。

俺が上でアカツキが下で。

つまりは押し倒し倒され…的な体勢でして。

奴のこめかみがヒクついているのを見た。

「…こんな所で私を押し倒すとはいい度胸だ」

さっきとは表情が一変。

低く唸るような声。
その言葉を全て聞く前に、自分から素早く奴の体から離れた。

アカツキの膝蹴りが空を切る。

「…違う!違うって!言ってる場合じゃねぇんだって!」

必死に抗弁しながら、屋上の入り口のほうを見やる。


黒い装束を全身に纏った性別不明の人物が立っていた。

見たことがある。
白石さんに誘われた船上パーティーで、脅迫状で俺達をおびき寄せ、爆弾を仕掛け、襲ってきたあいつだ。

手には分銅の付いた鎖。

その長い鎖は真横のコンクリートの床に突き刺さった鎌へと繋がっている。

そいつは一挙手のみで鎖を引き、刺さった鎌を軽々と引き戻した。

宙を飛んだ鎌はその手に戻り、収まる。

すごい腕力だ。
武器を扱い慣れている。


しかしまさか再び…しかも今度はこんな学校の中で襲ってくるとは。

一体こいつは何者で何が目的なのか…。

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