Fortunate Link―ツキの守り手―

深呼吸し、息を整える。
相手は、こっちが逃げ回って疲れるのを待っているのだろう。

やはり武器なしで逃げ回るのは不利どころの話じゃない。

どうしたものか。

逃げ道は二つしかない。

1.屋上の出入り口
2.飛び降りる

1は絶対に敵が阻止してくるだろうし、
2は死の危険度が高すぎる。

両方とも却下だ。
俺はまだまだ死ぬつもりなど無い。長生きしてひ孫の顔まで見るのが夢だからな。


と、そこで頭に妙案が浮かんだ。

…話し合って平和的に解決。

しかし、果たして話が通じる相手なのか。

「…あのぅ、すみません」

声を掛けてみる。なるたけ下手(したて)から。

「何で俺を狙ってらっしゃるんすかね?
出来れば場所を変えてお話を伺いたいんですが…」

言い終わる前に、

――ドゴォォッッ

返答は攻撃で返ってきた。
何てバイオレンスな。

足元に分銅が飛んできて、横へ飛んだ。

「あなたがまたその真価を発揮してくれたなら、話して差し上げましょう」

若い女性の声だった。
そうだ。前にも聞いたことがある。

『――月村明月。
彼女もいずれは手に入れるつもりですが、まずはあなたの中に眠る力を目覚めさせてからです』

やっぱりあの船上で襲ってきた人物の声と同じだ。

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