Fortunate Link―ツキの守り手―
距離が縮まり、張り詰めていた鎖が緩まる。
敵へと肉薄。
相手が鎌を振りかざすのが見えた。
俺は腕に巻きついている鎖を操り、分銅をその鎌へとぶち当てる。
――ドガッッ!!
敵の手元から鎌が離れる。
バランスを崩した敵は後ろへと一歩下がった。
だが同時に、奴は手を伸ばして俺の方に近い鎖を掴んだ。
鎖は未だ俺の腕に絡みついたまま。
ぐいっとそれを引っ張られ、こっちもバランスを崩される。
「うわっ…」
前へとつんのめった。
相手は上体を沈ませ、すかさず俺の腕と腰を掴む。
気づいた時には体を持ち上げられていた。
後方へと投げ飛ばされる。
反転する景色。
全てがスローモーションに視界を横切っていく。
そのせいか、冷静に状況を見ている自分がいた。
何で空が下にあるんだろ、なんて呑気なことを思った。
しかしやがて目に映った景色に愕然とする。
「……しまっ」
宙に投げ出された体は屋上の縁をも越えて…
その向こうに遠い地面。
妙に時間が緩慢に流れた。
「――シュンッッ!!!!」
遠くでアカツキの絶叫を聞いた気がした。
九兵衛の黒影が空に向かうのが見えた。
だが、その直後。
成す術もなく、まっ逆さまに地面へと落下していった。
☆::::第9話へ続く:::::☆