Fortunate Link―ツキの守り手―
四方八方に伸びた枝葉。
その間から透けてアスファルトの地面が見えている。
どうやら俺が居るのは校舎に面して立つ銀杏の大木の上部あたりで、
制服の背中部分に枝が引っかかり、何とかぶらさげっている状態のようだ。
こんな事が現実に起き得るものなのだろうか。
まぎれもない奇跡だ。
大げさでも何でもなく…。
一生分の運を使い果たしたのかもしれん。
……しかし
同時に危機的状況でもあった。
横を向くと、校舎の3階の窓が見えていた。
つまりは高さにしてそれぐらいの位置に居るということだ。
命綱ともいえるこの枝が折れてしまえば「ジ・エンド」。
そう考えた途端、ドライアイスにでも当てられたように背筋が凍りついた。
下手に動けば、このライフライン…生命線がポッキリいってしまう。
にっちもさっちも身動きが取れない。
「…うぬぬぬ…」
急に思い出したように、体のあちこちが痛み出した。
落下の際に、たくさん枝に引っ掛けたようだ。
――かくなるうえは…
大声で助けを呼ぶしかないのか?!この格好で。
きっと学校中の笑いものにされた挙句、伝説になるぞ。なりたくはないけど。
絶望的な思いで思案していると、
ガラリ、と目の前の3階の窓が開いた。