Fortunate Link―ツキの守り手―
開いた窓。
そこにはいつか見た顔があった。
「……おやおや」
白々しくも目を丸くしている。
長い黒髪に一筋だけ入った金のメッシュが目印。
いつぞやの保険医であり、アカツキに九官鳥を預けている日暮夕月とかいう謎の女。
「何がぶら下がっているのかと思えばあなたでしたか」
こっちを指差し、物凄く楽しそうに笑っている。
同時に、俺の中で殺意に似たものが芽生えた。
だが相手はこっちの苛立ちなどこれっぽっちも気づきやしない。
どこからともなく飛んできた九官鳥の九兵衛が彼女の肩にとまる。
彼女は「九ちゃん」と微笑み、つんつんとその嘴を指で触る。
そしてひとしきり相手が終わった後、無遠慮に俺の情けない姿をじろじろと見物しながら、
「屋上から誤って転落ですか?それともバンジージャンプに挑戦中?」
ふざけたことを訊いてくる。
何だよ、バンジージャンプに挑戦って。
どこぞの国の成人の儀式か。
「フツーに考えてどっちか分かんだろ」
すると奴は「あははは~」と軽快に笑い飛ばしやがった。
完全に他人事だな。おい。
「それにしても随分と間抜けな助かり方ですね~」
「言うなら助けてくれ」
「そうですね。場合によっては、助けてあげてもいいですよ?」
場合によっては、ってこの状況を見て言うセリフか。
一にも二にも救いの手を差し出すべきだろう。
「今から尋ねる質問に、私の満足の行く答を返してくれたら助けてあげます♪」