Fortunate Link―ツキの守り手―
あれ?そんなに力を込めた気は無いんだけど。
まぁいいか。
敵を逃すわけには行かない。
疾駆して、あっという間にその目前へと肉薄。
左手を振るう。
ってこっちは塵取りじゃん。
間違いなく威力が低そうだ。
しかし相手は俺の目を見て息を呑んだ。
驚愕したように動きを止める。
……何で?
こっちは塵取りだぞ。
内心疑問を抱きつつも、腹部めがけて斜めにそれを振り下ろした。
だが次の瞬間信じられないことが起きた。
その感覚は、以前、船上で爆弾をテニスラケットでぶっ飛ばした時の、あの昂揚に似ていた。
まず耳に届いたのは、ごう、という唸り音。
塵取りの先を発端として突風が巻き起こった。
それは塵取りと共に相手へと直撃し、目に映ったのは吹っ飛ばされる敵の姿だった。
まるで冗談みたいに軽々と風に煽られ、錐揉み状態になりながらコンクリートの床に激突し、しばらく転がってようやく止まった。
「……うっ」
衝突の勢いで黒い頭巾が脱げ、艶やかな長い黒髪が白い頬にかかっていた。
ゆっくりと起き上がり、その顔を上げる。
「………え?」
露わになったその相貌を見て、俺は思わず驚嘆の声を漏らした。