Fortunate Link―ツキの守り手―

それは女子が放つような鉄拳ではなかった。断じて。

地面を転がった後、顔を上げ、相手を睨み上げた。

「何しやがんだ!いきなりっ!!」

俺のその叫び声に対して返ってきたのは
言葉ではなく……。

蹴り。

顎を衝撃が突き抜けていった。

ぐわんという眩暈に似た感覚が襲い、目の前に星がちらつく。

朦朧となる意識で考える。

これは何だ。
これはアレだ。

弱り目に祟り目、泣き面に蜂…。

いやそんな諺なんてどうでもいい。

問題は、ナゼ自分がこんな理不尽な攻撃を受けているのか、だ。

しかしそんな事を考える間もなく、ガッと襟首を掴まれ、持ち上げられた。

その目の前にアカツキの顔があった。
普段通りの猛獣のような強力な眼光が宿っていた。

この目を前にすると、俺は草食動物よりも弱くなる。
草食動物は危機を察して機敏に逃げるが、俺は逃げることすら叶わない。

…やっぱり。
さっきの、いつもと違うふうに見えたのは目の錯覚だったか。

怒りに満ち満ちたアカツキが吼えた。

「…馬鹿が!こんな所から落とされやがって!ふざけてんのか!てめぇは!!」

どかんどかんどかん、と。
爆弾のような言葉だった。
多分意味なんて何も無い。

迫力だけが全てだった。

アカツキは荒々しく襟首から手を離す。
その反動で俺は地面に倒れこんだ。

「だが、馬鹿はなかなか死なねぇってのは本当だったらしいな」

低い声で呟く。

俺は顔だけを上げて何とかそのアカツキの顔を下から覗き見た。
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