Fortunate Link―ツキの守り手―
「………」
その表情を見て言葉を無くした。
とにかく驚いた。
いつもは誰彼構わず射抜く槍のようなその瞳が、今は宙を彷徨い、不安げに揺らいでいた。
弱弱しく。
これはまるで……
「今度、私の前であんな無様に倒されてみろ。
ぜってぇ許さねーからな」
アカツキはそれだけを言い残し、屋上の出入り口のほうへとスタスタ歩き去って行く。
俺はその横顔を目を擦りながら見た。
さらには目をしばたたかせ、まじまじと見た。
――錯覚なんかじゃない。
確かにそう思う。
その時ばかりは――、
アカツキが本当に、普通にか弱い女の子のように見えたんだ……。
一人取り残された屋上に、給水塔から漏れる湿った空気を孕んだ生ぬるい風が声のようなうめきを奏でながら駆け抜けていった。
まるで――、
何かを告げていくかのように…