Fortunate Link―ツキの守り手―
学食へと向かう途中、俺は恐る恐るアカツキに訊ねた。
「…なぁ、確かに守るとは言ったが、
普通に考えて、こんな昼休みにお前に危害を加える奴はいねぇだろ」
白昼堂々もし居たとしたら、自殺志願者だ。
この喧嘩上等暴力女は周りに色々と多く因縁を作っていて、一昨日までアカツキを襲ってくる輩が居たのは、大抵それが原因だった。
しかし母さんの話や昨日襲ってきた少女の件を合わせて考えてみるに、今後は事態が変わって来る気配がある。
だからと言って、アカツキに変に構えられても困るわけで…。
どう言葉を続けようかと考えていると、
「…何せこの通りスタイル抜群だからな。
獣な男どもが寄り付いてくるみたいだ」
と、アカツキは真顔でトンデモ発言をこぼした。
「……え」
俺は横目で彼女の全身を眺めやってみた。
確かにプロポーションは悪くない。
背は高く、良く締まった腰にすらりと長く伸びた足。
顔だって、目つきの悪ささえどうにかすれば十分見映えのするつくりだった。
……だが。
その完璧なまでの体に一つ、致命的欠点があった。
…胸が無い。
突き詰めて言うなら、色気が皆無。
俺は心中でアカツキを鼻で笑ってやった。
(――残念だったな。お前が狙われる目的は”ツキ”の方だ。寄り付いてくる訳ないだろ、バーカ)
と思った途端に
俺は殴り飛ばされていた。
無様に床に転がってから、アカツキの方を見上げた。
「…何でだ?!!」
至極最もな意見を叫んだ。
するとアカツキはさらりと
「何だか馬鹿にされた気がしたんでな」
涼しい顔で答えた。
…恐ろしい勘だ、と思った。