Fortunate Link―ツキの守り手―


奴の言葉は俺にとって脅威だった。

今までひた隠しにしてきたものを炙り出されていくようで。

その動揺の全てを見透かすように奴は目の前で笑っていた。

「――アカツキちゃんを守る。それを阻むものは倒す。その為なら何だってする」

「違うっ」

やめてくれ、と思った。

アカツキの前でそんな事を言うのは…。

「現にさっき、お前は俺を倒すべく動けてたやん。無意識の内に」

「………」

喉が引き攣る。

「殺気ビンビンの手強い敵が不意打ちに襲うてきたら、急所を狙って敵を排するんやろ。さっきみたいにな」

肝が凍り付いていく。

「なぁアカツキちゃん。こいつは安穏としたあんたの日常に埋没しとるけどな。その本質はコレなんや。いくら光のある場所で暮らしとっても、その影は隠されへん」

……やめろ、やめろ。

引き攣った喉を何とか動かす。

「やめろっ…」

搾り出た弱々しい声で、奴の言葉を拒絶した。



分かっていた。

奴の言っている事は、間違っていない。

だからこそこんなにも…。
否定したいのだと。受け入れたくないのだと思っている。


手の震えを抑えきれない。

怖い。

怯えていた。

……何に?

俺は何に怯えている?

自問を続け、すぐにその存在に思い至る。

アカツキだ。

アカツキに知られることを恐れているんだ。



俺は――、

アカツキに拒絶されたくない…。

その一心で、情けないほど震え、俯いて、ただ動けない…。


「おい、シュン」


俯いた顔をあげさせてくれたのはアカツキの声だった。

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