Fortunate Link―ツキの守り手―
「情けねぇ顔してんじゃねーぞ」
「……アカツキ」
見上げると、いつもと変わらぬ仏頂面があった。
「今更お前の何を知ったところで、私の中のお前が変わることはねぇよ」
「……… 」
俺はまじまじとアカツキを見た。
身体の震えはいつのまにか止まっていた。
「ありがとう。アカツキ」
ゆっくりと立ち上がる。
「なっ!身動きできる?!
暗示が解けたやと?」
瀬川が驚きの声をあげる。
が、アカツキと俺の方を交互に見、得心がいったように笑った。
「なるほど。これもツキが働いたせいというんか…」
それから俺のほうをじっと見据え、
「ひとつ謝っとくわ。
本気になれ、と言っておきながら、俺の方がちゃんと本気になれてなかったわ」
その瞳に深く暗い影が宿る。
目を合わせたら危険だとすぐに分かった。
俺は一瞬だけアカツキに目線で合図を送った。
とほぼ同時に、近くの床に落ちているテーブルクロスを引っ掴んだ。
それを翻し、相手の視界を遮るようにバッと広げる。
「…ははっ」
それを見た瀬川は馬鹿にするように哂った。
「そんなんで目くらましのつもりか」
苦し紛れの策に出たと思ったのだろう。
だが俺は広げた布に隠れて、体を深く沈ませ前進していた。
ほぼ地に平行になるぐらいに体を倒し、床すれすれの低姿勢で駆ける。
やがて、はらりと布が舞い落ち、遮られていた視界が露わになった。