Fortunate Link―ツキの守り手―

刃を弾き返された夕月さんはわずかに後退した。

「初対面じゃありませんよ」

口元だけで笑い、そう告げる。

その途端に彼女の身に異変が起こった。

俺の目の前で――。
ゆっくりと彼女の髪色が変わった。

カラスの濡れ羽のような黒髪から、銀糸のように煌めく白銀の髪へと。

あどけなさが残る愛らしい少女の顔から、作り物のように整った大人の女性の顔へと。

そしてその黒い目が、異質な輝きを放つ金色の目に変わった。

俺は唖然としながら、すっかり様変わりしたその姿を見た。

「………な…んで」

するとちらりと彼女は俺の方を見て、

「ずっと貴方の傍にいると言ったでしょう?」

その表情は微かに笑っているようだった。

「なるほど。確かに一度会うてるな。
せやけど、そうやってわざわざ姿変えて学校に紛れてるんはなんでや?」

瀬川の問いかけに、

「それは、守谷俊を守る為です」

銀髪の夕月さんははっきりと、そうこたえた。

「それがこの身に課せられた唯一の命ですから」

「命?」

「私の主からの命令です」

「主…」

もはや聞き返すことしか出来ない。

「あなたのお父さんですよ」

「………」

今度こそ言葉を忘れて固まってしまった。

「話はこれぐらいにしておきましょうか」

夕月さんはそう言うと、落ちているテーブルクロスを拾い上げ、バッと頭上に広げた。
布は夕月さんと俺とアカツキを包むように落下してくる。

「わわわ…」

気付けば布に包まれ、やがて光に包まれた。



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