Fortunate Link―ツキの守り手―
*
光が止み、周りに景色が戻る。
そこは雑草が鬱蒼とするほど伸び放題の、武道館の裏手だった。
どういうわけか、俺達は一瞬で場所を移動していた。
前方には銀髪の夕月さんがいて、早速立ち去ろうとしていた。
「あ、ちょっと」
思わず呼び止める。
夕月さんは足を止めた。
「あんまり瀬川蓮には近づかない方がいいですよ。
お気付きかもしれませんが、彼は今まで何度か人を殺めてます。
何をしでかすか分からない、危険な類いの人間です」
それだけ言って、また立ち去ろうとする。
「あ、あの。
あなたは何者なんですか?」
「前にも言ったでしょう。
あなたは私を知っているはずだ――って」
少しだけこちらを見た金色の瞳が、悲しげに揺らいだ気がした。
その瞬間、胸が一際高鳴った気がした。
彼女の眼差しが、俺の中で、知っている人のものと重なった。
しかし、声をかける間もなく彼女は立ち去っていく。
「シュン。
後を追わなくていいのかよ?」
「ああ」
俺は頷き、去っていく彼女の後ろ姿を見た。
「いいんだ」
分かってしまった気がした。
彼女の正体を…。
彼女が自らその正体を名乗らないわけも…。
(俺が気付くまで、待っているのか…)
彼女の目の金色は、まるで夕空に浮かぶ月のように優しく切なく柔らかく…。
真綿のように俺の胸をしめつけた。
*