Fortunate Link―ツキの守り手―
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部屋に一人取り残された瀬川蓮は、三人の消えた後を眺めていた。
「一瞬で消えおおせるとは。
さすがやな、千里眼(せんりがん)の冴月(さえづき)」
感心するように呟く。
「…それにしても」
ふぅと息を吐き、
「主がいなくなっても守り続けるんか…。
一途な女やな」
思い馳せるように遠くを眺める。
やがて、テーブルに山積みしている辛い棒に手を伸ばし、ボリボリッと頬張る。
機械的に袋を破っては、食べ、袋を破っては、食べ…。
あっという間に目の前に袋の殻がうず高く積まれていく。
飽きるほどに食べまくり、ふぅと一息ついて無感動にその山を見つめた。
「…はぁ。こんなんハバネロちゃうわ。辛さ抑え過ぎ」
立ち上がり、テーブル脇を歩く。
「やっぱもっとガツンと刺激的に辛ないと……ん?」
きらりと輝く何かが床に落ちていた。
それを拾い上げる。
鈍く輝く刃。クナイだ。俊の置き土産。
その刃先に指を滑らせる。
「…奴はほんま甘いな。致命的に甘すぎるわ」
穴に指を入れ、くるくると廻す。
「…甘っちょろすぎて」
廻していたそれがぴたりと手の中に収まる。
無造作に構え、一挙動でそれを壁に投擲。
――ビシィィィッ!!
コンクリートのその壁に破壊的な速度をもって深々と突き刺さった。
割れたひびからその細かな残骸がパラパラと床に零れ落ちる。
「……反吐が出るわ」
その双眸にはあの軽々しい笑みの面影は微塵もなく消え去り。
全てのものを、己さえも、敵に廻すかのような憎悪で虚空を睨み。
何も無い宙に向かって、一人、呟く。
「――甘いのなんて大嫌いや」
誰かを守る為に誰かを傷つけることを躊躇う甘い人間も…。
そんな甘さゆえにかつて大切な誰かを守れなかった自分も…。
けれど、それは誰にも聞き取られず、どこにも辿り着けない独白。
ふいに窓の隙間から紛れ込んできた風さえも、その声を拾うことはなかった…。
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☆::::第11話へ続く:::::☆