Fortunate Link―ツキの守り手―
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その場所にたどり着いた時、私は傷つきボロボロだった。
そんな私の前に彼は現れた。
私の体を労り、自分の家に来ないか、と言ってくれた。
普段の私なら断ったはずだった。
それまでの私は一瞬たりとも誰かと一緒にいたことがなかった。
なぜなら私に近づいてくる者は皆、欲深い目をしていたから。
けれど、彼の目は今まで見てきた誰とも全く異なっていた。
どんな者さえも受け入れ、包み込むような、優しくとても綺麗な目をしていた。
疲れていたせいもあったのだろうか。
私はそんな彼の目に吸い込まれそうになっていた。
自然と誘われるように、私は彼の言葉に頷いていた。
案内された彼の家はとても広大で立派な造りのものだった。
どうやら何人もの人々がここに住まい、一緒に
暮らしているようだった。
私はそこで体の傷の手当てを受け、毎日三食の温かい食事を頂いた。
至れり尽くせりの世話を受け、弱っていた体もみるみるうちに回復した。
元気になった私は彼に礼を言った。
その時の私は無一文だった為、受けた恩をどうやって返せばよいか、彼に尋ねてみた。
すると彼は笑ってこう答えた。
「そんなこと気にせずともよい。
出ていきたければ、好きな時に出ていけばよいし、ここに居たければ、居たい時まで居ればよい」
そう言われてしまい、私は困ってしまった。
今までこんな経験はなかったが、受けた恩は返すのが当たり前と聞く。
「どうしてもそなたの気がすまぬと言うなら、そうだな…。その強そうな腕を勝って、この家の警護をお願いしてもよいかな?」
彼は相変わらず柔らかな笑みを浮かべて、私にそう提案した。
私はほっと胸を撫で下ろし、「喜んで」と頭を下げた。