Fortunate Link―ツキの守り手―
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私が雨宮家の警護をするようになってから、この家の色んなことがわかってきた。
まず、この家には雨宮家一族以外の人々が沢山住んでいるということ。
その理由はこの家の長の人柄に依るところが大きいようで…。
私のようなこの山奥に迷いこんでしまった人の世話を焼き、やがてその人達がこの家に居つくというパターンが多いようだった。
そして、我が主、雨宮蘇芳様には奥方がいた。
彼女の名は紅羽(くれは)と言い、よく蘇芳様に小言を溢していた。
「まったく、貴方という人は。
来るもの拒まず、ね」
「すまないね。これは性分なもので」
蘇芳様は呆れ顔の紅羽様を気にせず、笑顔だった。
「でもこうやって家族が増えるのは良いことじゃないか」
「そうね…」
頷く紅羽様の横顔がなぜか少しだけ寂しそうに見えた。
そして、私はある日、気になっていたことを蘇芳様に聞いてみた。
「なぜ、私のような人を沢山受け入れるのですか?」
すると、いつもにこやかな蘇芳様に珍しく、少しだけ寂しそうに微笑んだ。
それは、あの紅羽様の表情と重なった。
「私達には子供ができないのでね…」
彼ら一族は昔、川に流れる水が絶えそうになったとき、親からはぐれた水竜の子供――蛟(みずち)を捕まえ、封印したらしい。
そして干ばつなどに見舞われそうになるたびに、蛟に雨乞いを行い、雨を降らしているそうだ。
そして代々、一族の長はその業を背負い、子を作れぬ体になってしまうらしい。
一方、紅羽様も、風鬼という水の流れを邪魔するアヤカシを封印してるそうで、その封印に力を使われ、子を作る力を無くしてしまっているそうだ。
「…すみません。
そうとは知らず、不躾な質問を…」
「いいんだ。
冴月が知りたいと思ってくれたなら、嬉しいことだよ。」
蘇芳様はいつもの笑顔を私に向けてくれた。
しかし、子供が出来ないはずの二人に子供が生まれたのは、それから三年後のことだった。