Fortunate Link―ツキの守り手―



放課後。

部に所属していない俺は、アカツキが部活を終えるまで待たねばならない。

それまで非常に手持ち無沙汰なわけだが、

大抵は、勝手に将棋部に混じって一勝負したり、
生徒会執行部からラケット等を借りて、サトシと一緒にテニスに興じたり…。

何とか暇を潰している。


だが、今日は――、

いつもと違って、早々と武道館脇で待機していた。

辺りには剣道部員の気合の入った掛け声が響き渡っている。


周囲に目を走らせるが、怪しいところは今のところナッシング。

怪しい気配も感じられない。


何故今日に限って、こんなに神経を尖らせているかといえば…

朝から感じている視線の根源を探る為だ。

アレは尋常じゃなく強い視線だ。

アカツキに向けられているものだとしたら、放ってはおけない。


武道館の側面の開いている引き戸から、ちらりと中を覗いてみる。

一心不乱に素振りの練習を続けている剣道部員達。

防具を身に着けている為、さすがにアカツキがどれだかは分からない。

…おっ。偉そうに腕組みして見ているアイツかな?


そこで、ふと、こちらから剣道場を挟んで向かいの扉の隙間で、中を熱心に覗いている女子生徒が居ることに気づいた。

彼女も俺が見ていたのと同じ方向を見ていた。

釘付けのようにひたすら強い眼差しで…


「…あっ」

目が合った。

彼女の方も俺に気づいたらしい。

すっと視線を外して、身を翻して外へと引っ込む。

まるで逃げるように。

あからさまに怪しすぎる。

「…ちょっ、待てって」

俺も慌てて、彼女の居た向かい側に向かって、武道館の外周を回る。


――朝から感じてた視線の主。

走りながら、俺の中でそれは確信に変わりつつあった。

< 28 / 573 >

この作品をシェア

pagetop