Fortunate Link―ツキの守り手―
放課後。
部に所属していない俺は、アカツキが部活を終えるまで待たねばならない。
それまで非常に手持ち無沙汰なわけだが、
大抵は、勝手に将棋部に混じって一勝負したり、
生徒会執行部からラケット等を借りて、サトシと一緒にテニスに興じたり…。
何とか暇を潰している。
だが、今日は――、
いつもと違って、早々と武道館脇で待機していた。
辺りには剣道部員の気合の入った掛け声が響き渡っている。
周囲に目を走らせるが、怪しいところは今のところナッシング。
怪しい気配も感じられない。
何故今日に限って、こんなに神経を尖らせているかといえば…
朝から感じている視線の根源を探る為だ。
アレは尋常じゃなく強い視線だ。
アカツキに向けられているものだとしたら、放ってはおけない。
武道館の側面の開いている引き戸から、ちらりと中を覗いてみる。
一心不乱に素振りの練習を続けている剣道部員達。
防具を身に着けている為、さすがにアカツキがどれだかは分からない。
…おっ。偉そうに腕組みして見ているアイツかな?
そこで、ふと、こちらから剣道場を挟んで向かいの扉の隙間で、中を熱心に覗いている女子生徒が居ることに気づいた。
彼女も俺が見ていたのと同じ方向を見ていた。
釘付けのようにひたすら強い眼差しで…
「…あっ」
目が合った。
彼女の方も俺に気づいたらしい。
すっと視線を外して、身を翻して外へと引っ込む。
まるで逃げるように。
あからさまに怪しすぎる。
「…ちょっ、待てって」
俺も慌てて、彼女の居た向かい側に向かって、武道館の外周を回る。
――朝から感じてた視線の主。
走りながら、俺の中でそれは確信に変わりつつあった。