Fortunate Link―ツキの守り手―

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赤子はいつの間にか立って歩けるまで成長していた。

俊というその男の子は蘇芳様によく引っ付いていた。

私は遠くでその様子を見守り、あまり近寄らないようにしていた。

それでも、俊は私を追いかけてきてはよく一緒に遊ぼうと言ってきた。
気づけば毎日、俊の遊びの相手をしていて、いつの間にかすごくなつかれていた。

しかし、おかしなことに、俊が生まれてからずっと、母親の紅羽様の姿を見ていない。

不思議に思いつつも、蘇芳様にそのことを訊けないまま、月日だけが過ぎていった。

そんな平穏な日々が続いていたある日のある晩。

きな臭いにおいに、目が覚めた。

何となく辺りに危険な気配を察し、いつも脇に置いている小太刀を手に取った。

外に出ようと襖を開けた瞬間、そこにいた何者かが襲ってきた。
私は千里眼の能力により、その攻撃を先に察しており、相手の斬撃を受けとめ、その体を蹴飛ばした。
黒装束の相手はすぐさま立ち上がり、こちらには向かってこず、身を翻して逃げていった。

「…何だったんだ」

訝しみながらも廊下を進むと、そこには屋敷に住まう人達が何人も点々と倒れていた。

「これは…」

その誰もが急所を刺され、息絶えていた。

(何かが起こっている…)

そう察した私は急いで廊下の先を走った。

その先には火の手が上がっていた。
煌々と燃え上がっているのは、蘇芳様が寝泊まりしている部屋周辺だった。

「蘇芳様!!!」

しかし火の手が強すぎて、そこから先に近づけなかった。
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