Fortunate Link―ツキの守り手―


「ここから逃げて……俊を…育ててくれないか…。戦いかたを教えて……自分の身を守れるようになったら…、これを俊に渡して…」

私は首を振った。

「できません。
私のような人間が子供を育てるなど無理です…」

「冴月…君はもっと…自分に自信をもっていい……君は…強く、優しい人だ……」

「そんなこと、ありません」

「すまないね……君に何も…してやれなかったのに……勝手なことを…言って…」

私は首を横に振り続けた。

「でも…私の魂は…君達の傍にいる。
この刀とともに…君と俊を守るから…」

蘇芳様は私に向かって手を差し出した。
私は片腕に俊を抱き直し、屈んで、その手を掴んだ。

蘇芳様は微笑み、その笑顔のまま目を閉じた。

「蘇芳様!蘇芳様!」

いくら呼んでも、蘇芳様が目を開けることはなかった。

その時、どこか遠くから足音が聞こえた。
目を虚空へ向け、一瞬先を見る。
先ほどの黒装束の何者かの姿が見えた。

本当は、ここに蘇芳様の体を置いていきたくなかった。
けれど、時間がそれを許さなかった。

私は歯をくいしばり、蘇芳様から託された刀を拾い、俊を抱きかかえて、その場から走り逃げた。


それから後。
俊を連れての長い逃避行が始まった。

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