Fortunate Link―ツキの守り手―
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誰か分からぬ追っ手は執拗に私達二人を追いかけてきた。
いくら逃げても追いかけてくる追っ手に、二人で逃げることに限界を感じていた。
(せめて…俊だけでも)
追っ手は自分が引き受け、俊だけでも安全な場所で暮らしていくことが出来れば…。
俊を育ててくれ、と言った蘇芳様の命令に背くことにはなるけれど…。
(そもそも無理だったんだ…。私が子供を育てるなど…)
人を傷つけることしかしてこなかった私は、戦いこそお似合いだ。
(戦って、それで誰かを守れるというなら…)
私は俊を連れて、児童養護施設の前に立っていた。
(ごめんなさい。蘇芳様。
ご命令を果たせなくて…)
意を決して私は俊に声をかけた。
「少しだけここで待っててくれる?」
俊にそう言って、繋いでいた手を離そうとした。
「冴月。どこいくの?」
円らな眼が私を見つめていた。
「ちょっとだけ用事があるの。
だから、ね。良い子にしてここで待っていてね」
けれど、俊はぎゅっと手を握ったまま離さない。
「俊…?」
「だったら一緒に行く」
俊は唇を噛みしめ、じっと私を見ていた。
「僕、足手まといにならないよう強くなるから。だから、置いてかないで」
「俊…」
気づけば私は俊を思いっきり抱きしめていた。
「ごめん。ごめんね」
何度も謝りながら、私は心に決めた。
この子が私を求めてくれるというなら。
この子は私が育てよう。
苦しい時は一緒に苦しみを乗り越えられるよう、強く育てていこう。
私で教えられることはすべて教えていこう。
共に生きていくためなら…。
厳しい戦いのすべだって教えよう。
そう、決心をした瞬間だった
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