Fortunate Link―ツキの守り手―


ふと時計を見上げた。


「そろそろ上がる時間か」

掃除用具を引っ張り出してくる。


このファミリーレストランはよくある24時間営業じゃなく、24時閉店。

次に入る人が閉店作業をしておしまい。


箒で床を掃いて、水を流して、ごしごしと磨く。

既にお気づきの方もおられるかと思うが、俺は厨房で働いている。

本当はホールの方で働きたかったが「そっちは人手足りてるから」と店長に一蹴され、キッチンの方で働くはめになった。

「はぁ…」

しかもこの時間帯は一人で任せられることが多い。

すなわちこの場には俺以外は誰も居ない。

掃除しながら、一人ぼーっと取りとめもないことを考える。

(…変な保険医の夕月さんが、実は銀髪の謎の女性、冴月さんで…、冴月さんの正体はおそらく――)

「…ああっ!もう!!
なんでこんなにややこしいかな!」

頭をわしゃわしゃと掻き、叫ぶ。

これ以上考えても、答えは同じだ。

ただひとつ、なんとなく思うことは…。

(俺自身、何か試されてるような、そんな気がするんだよなぁ)

これからのことに思いを馳せながら、黙々と掃除をこなし、作業を終えた。
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