Fortunate Link―ツキの守り手―


そうして、仕事を終え、更衣室でちゃっちゃっと着替えを済ませる。

ロッカーに仕事用の服を突っ込み、身軽になって部屋を後に。


帰り際にひょいっと表の方へと顔を出した。


「お先に失礼しまーす」

レジ近くに居た梶原さんに軽く会釈をして挨拶する。

すると相手は「あ」と声を漏らしたきり。
何を思ったのか、おもむろにつかつかとこっちに歩み寄ってきた。

「シュンくん…」

声を潜めて話してくる。

「どうしたんですか?」

そのただならぬ様子に、自然とこちらも声を潜めてしまう。

「ちょっと…怖いお客さんが居るんだけどー」

「……え。マジですか」

「マジよぉ…」

泣きそうな怯えた声で言ってくる。

その声だけで妙に不安を掻き立てられてしまう。

「どんな人?」

恐る恐る訊ねてみる。

関わり合いになりたくはないけど、「ほなさいなら」とこの場を後にするのは躊躇われた。

しかも今日という日に限って、頼りの店長は居ないし…。


「何か知らないけど、物凄くこっちを睨んでくるのー」

うわー。タチ悪そう…。

「……恨みを買われてるとか?」

「だってぇー知らない人よぉ?」

ぷくぅと頬を膨らませ、上目遣いで見てくる。

そして、ついっと俺の服の袖を引っ張った。

「ほらー。あそこに居るでしょ」

こっそりと店内の一箇所を指差す。

「端のテーブルのー腕組みしてる金髪のー…」


結構遠い距離からなので、目を凝らして見る。

あー居た居た。

確かに見た目からしてめちゃくちゃエラそーだな…。おっかねー…。

でも見覚えありすぎる顔…。


「…あ」

硬直する。

おいおい。何であいつがここに居るんだ?!

「どーしたの?」

不思議そうに訊いてくるその声も耳を素通りする。



視線の先にはアカツキが居た。

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