Fortunate Link―ツキの守り手―


「…べ…別に…」

珍しくアカツキは言いよどんだ。

「何となく…気になって来てみただけだ」

「……それだけ?」

言うと、アカツキはギッと睨んできた。

「来ちゃあ悪ぃかッ」

「…い、いや悪くは無いけど、さ」

その剣幕に慌てて首を振り振り答える。

「…ふん」

アカツキはそんな俺を見てから、ふいっと目をそらした。

その目はあらぬ方向を見ていた。

どことなく戸惑っているようにも見える。

「本当は言いたい事があって来た」

「……へ?」

その横顔を見る。

目を合わせようとはしてこない。

気のせいかその目が泳いでるふうに見える…のはやっぱり気のせい?

「…ここんとこずっと部活にも身が入らない。全然集中できない」

苛立ちをあらわにして言ってくる。

「気づいたらぼんやりしちまう。ずっとずっと気になって…そんなこと考えてたらこんな所まで来ちまった」

テーブルの上に置かれているその拳が白くなるほど強く握られる。

こっちはそれを見ているだけでヒヤヒヤしてしまう。殴るなら外でお願いします。

「このままじゃ居られない」

その拳が震えだす。

「早く言っておかないと…近いうちにどうにかなってしまいそうだ」

「…あ…アカツキ?」

その様子がおかしいことに気づく。
怒りに震えているわけではなさそうだ。

そういえば…とアカツキの格好をまじまじとよく見てみる。

思えばその雰囲気もいつもと違う。

うっすら化粧までしているし。
服装も…カラフルなパーカーの下からフリルの多いワンピースが覗いてて。

何だか…非常に女の子らしい感じで。


「…だからお前に言わにゃっ…きゃいけない。私は」

舌まで噛んじゃってる。大丈夫か。


「…私はっ…お前の……」


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