Fortunate Link―ツキの守り手―


逃げたその女子生徒の足は普通に遅く、

俺の足で難なく追いつけた。


呼び止めようと、彼女の肩に手を触れようとする直前、

「きゃっ」

彼女は小さく悲鳴を上げて、俺の目の前ですってんころりと転げた。

草に足を取られたらしい。
武道館の裏手は手入れが行き届いてなく、雑草が伸び放題だった。


「…大丈夫ですか?」

転んだ彼女に声を掛ける。

直接の原因は俺に無いにしろ、何だか非常に申し訳無い気分になった。

追いかけて来ておいて…という感じかもしれないが、それでも俺には彼女に訊きたいことがある。


――と、コロコロと地面に転がる小さな物体が目に映った。

屈んでそれを拾い上げてみる。

透き通った深い赤色の立方体。

キラキラと宝石のように輝く…サイコロ?


「あっ、それ私のです」

立ち上がった彼女が俺の方を見て云う。

「…ナゼにこんな物を持ち歩いてるんだろう?」という疑問が一瞬掠めたが、
俺はすぐにそれを彼女に返した。

受け取ったその女子生徒は、困惑げな眼差しで俺の方を見上げてくる。

すごく居心地が悪そうだ。

そりゃそうだろう。

逃げようとして、じきに追いつかれてしまった訳だから。

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