Fortunate Link―ツキの守り手―
アカツキが意を決して何かを言おうとした瞬間…。
――ウィーン。ガチャガチャ…。
「ブーン…」
後ろの席に座っていた親子連れの、子供の方がこっちに身を乗り出してきて、椅子のへりでミニカーのタイヤを擦らせて遊び始めた。
多分お子様ランチか何かの景品。
ちょうどアカツキの耳元で…。
「ブーンブーン」
しまいにはその肩で楽しそうにミニカーを滑らせ始める。
乱暴にガッチャガッチャいわせている。
何て命知らずなガキンチョだ。
親も「こーら」とやんわりとしか注意をしないし…。
「こ…こっ…この…」
アカツキの頬が引き攣り、痙攣し始める。
肩のマッサージにはならなかったようだ。
…やばい。
危険を察した瞬間、アカツキが並々ならぬ勢いで立ち上がった。
「…こんのっ…ガキャァァ」
その目は完全にイッちゃってた。
「うわー!待て待て!!」
慌ててアカツキの腕を掴んで押しとどめる。
何でそんなに怒り狂うんだ。相手は子供なのに。気が短いにも程がある。
「ちょっ…ストップッ。いったん落ち着け。ブレイク」
無理やり鬼の形相のアカツキを座らせる。
「すみません。ホントすみません」
アカツキに代わって相手の家族さんに何度もペコペコと謝った。
「いえいえ。こちらの方こそごめんなさいね」
親御さんは顔を青くしてアカツキの方を気にしつつそう言ってくれた。
明らかにビビらせてしまった模様。
何となく後味悪いものを感じつつ、再び席に着いた。
「お前どうしたんだよ?」
呆れ口調で聞く。
アカツキは変わらず険しい表情のまま忌々しげに、
「せっかく大事なことを言おうとしたのに…水を差されたから…」
「…はぁ」
だからってあんなに怒ること無いだろ。
「…で。その大事なことってのは何なんだよ?」
溜息をつきながら訊いてみる。
「………」
アカツキは答えない。
むむっとしかめ面のまま。
周りを気にするように、少しだけ首を巡らせて。
「やっぱり駄目だ。こんな場所じゃ言えない」
それきり黙りこんでしまった。
結局、店を出ることにした。