Fortunate Link―ツキの守り手―


危うくその返答を承諾しかけて…、


「…あっ。でもマズくないか?」

…マズイことに気づいた。

「何が?」

「こんな夜遅くに」

今から買い物して家に帰ってご飯食べて…って時間経過を見積もればどう考えても就寝時間になっちまうぞ。

「早く真っ直ぐ帰ったほうが…」

「別に、いい」

強い調子で断固として言う。まるで意地になってるみたいに。


そういえば、とふと考える。

アカツキって俺に何か用事あったっけ?

急にバイト先に現れてそれから…。

思い返してみて思い出す。

そうそう。俺に何か言おうとしてたんだよな。


「あー。お前さぁ、さっき何か言おうとしてたろ。あれって何だったんだ?」


別段何も思うことなく何とはなしに訊ねた。

特に変なことを訊いた訳でもなかった…はず。

それなのに、

「………っ」

アカツキは飛び出しかけた驚嘆を飲み込むように息を漏らした。こっちがビックリだ。


「…さ、さっき……って、な、何のことだ?」

声が裏返りかけている。

あからさまに動揺してる。表情が見えなくても空気を伝ってそれが分かるぐらいに。

「何か大事な事言おうとしてたんじゃないのか?」

ファミレスで。言おうとしたところを邪魔されたことにあんなに憤るぐらいに。
おそらくは大事なこと(?)だったんじゃないのか?

「………」

アカツキは迷うように黙り込む。

「…あ。…あー…あれか…」

ようやく声を出したかと思えば今度は歯切れが悪い。

「…あれは…ま、まぁ…そ、その…」

声を詰まらせる。

どうしたんだまったく。詰まりすぎだ。
喉に餅でも詰まってんのかな。でも餅なんて食べてなかったよな。ポテトしか。


「おーい」

再び黙りこくってしまったアカツキに困惑してしまう。

今までこんな反応が返って来たことは無い。こんな反応は見たことが無い。訳が分からない。


だって……。



いつも傲然としているあのアカツキが…。


――見るからにキョドっていた。


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