Fortunate Link―ツキの守り手―

何だこれは、と思う。

これは一体何の怪奇現象なんだ。

普段のアカツキは言いたいことを何でもズバズバ言う。言わなきゃいいことまで。

言おうとしたことを言えなくて困るなんてことはまず無い。

……それなのに。


「何だよ?はっきり言えよ」

促してみる。

「………」

でもそれが逆効果になってしまったようでアカツキは口を閉ざしてしまった。どうすりゃいいんだ。

「………」

「………」

何だこの沈黙。

精神的にじりじりくる。

居心地が悪くて仕方がない。


「……えーと。……晩飯何にしよっかなぁ」

手詰まりになって何となく思いついたことを口にしてみる。

「お前は何がいい?」

「……何でもいい」

「……そ、そっか…」

再び沈黙。

会話も弾まない。

あちこちがむずむずしてくる。

まだ殴られてる方がマシかなと思える。反応があるだけ。

おとなしいアカツキなんて何だか気持ち悪い。

「……粉物とかいいかなぁと思うんだけど。お好み焼きとかさー」

沈黙を埋めるべくむなしい努力をしてみる。

「………」

やっぱり応答無し。


…うーむ。

こりゃあ偽者か。誰かがアカツキのスーツを着てるのかもしれない。

そーか。だから上手く喋れないんだきっと。そりゃ動きづらくてぎこちないよな、うんうん。

本体は背中からチャックが開いて中からババンと。

……いかん。思考が変な方向に。


沈黙から逃避するように、そんなくだらないことを一人つらつら考え…。


その時――、

「………」

――不意にピタリと足を止めた。

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