Fortunate Link―ツキの守り手―
「………えっ?!」
思わず俺はそう声をあげてしまった。
「…それだけ?」
つい訊いてしまった俺に、彼女はにっこり笑って頷いた。
「それだけよ」
穏やかな優しい声でそう言って、俺の頭に手を乗せた。
俺のほうが背が高いので、彼女が見上げる形となる。
「あれから、もう随分あなたは大きくなって…。私が居なくても大丈夫なぐらい…」
「…母さん…?」
「そんな心配そうな顔しないで。
用事が終わったら、今度こそちゃんと帰ってくるから」
そう言って、彼女は扉に手をかけた。
「渡しておいた木刀、ちゃんと使ってアカツキちゃんを守るのよ。あれはきっと、あなたの身も守ってくれるはずだから」
「…ああ、うん」
俺は頷くことしかできなかった。
それから、彼女を見送った。
家を出た彼女の姿は、暗闇の中、消えていった。
☆::::第12話へ続く:::::☆