Fortunate Link―ツキの守り手―


「…大丈夫?」

それに気づいた蓮は、倒れたダンボールをひょいひょいと拾い、バランス良く台車の上に乗せていく。

「…あっ。はいっ。…すみません!…いやありがとうございます!」

女子生徒はペコッと頭を下げる。

「よぅさんの量やな。一人で大丈夫?」

「だ、大丈夫です」

「そう?……ほな気をつけて、な」

蓮は懐っこい笑みを浮かべて、ひらひら手を振る。

それを見た女子生徒の顔にパッと朱がさした。

「あっ、あの…」

ごそごそと箱の中から何かを取り出し、

「良ければこれどうぞ」

差し出したそれは、可愛らしくラッピングされたクッキー。

蓮は一瞬きょとんとした顔をし、

「えっ?俺に?」

「は、はい」

どぎまぎした様子で相手は頷く。

蓮はそれを受け取り、

「おおきに、な♪」

ニッと笑って礼を言った。

女子生徒はますます顔を赤くし、ペコペコと頭を下げ、台車を押して去っていった。


それを見送り…、

「甘いもん苦手やけど」

ちらっと手元に目をやる。

「……悪い気せぇへんな」

摘み上げたその袋を見ながら、頬を緩ませる。


やっぱり高校生は良い。
初々しくて清々しくて。


上機嫌で再び歩き出す。

今日は楽しい一日となりそうだ、と。
そんな予感を胸に……。




「――随分と楽しそうにやっているな」


和やかな騒音を割って、凛と響く声。




突如、背後から掛かったその声に蓮の足がぴたりと止まった――。

一秒前までの弾んだ気持ちが、その一瞬にして消失した。


顔を見なくてもその声の主が誰であるか、蓮には分かっていた。

でも信じられない。
なぜこんな所に?

確かめるべく、振り返る。


「――スイ」


思ったとおりの人物が、そこに立っていた。

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