Fortunate Link―ツキの守り手―


翆は腕を組み、背筋を伸ばしたまま佇み、蓮に尋ねる。

「ここに居るということは、もう”奴ら”と接触しておるのだろ。どうなんだ様子は?」

結局は気になってんじゃんかよ、と思いつつ、蓮はジッポーを拾って立ち上がる。

「んー。やっぱり、あいつらは強く引き合いすぎとるみたいやわ。このままやと軌道ごとズレてしまいそうやな。月と地球みたいにほど良い引力で引き合ってくれたらいいんやけど」

「やはり…」

整った顔を歪め、深刻そうに頷く。


「で、今日は俺に会いに来ただけなんか?」

「……いや」

翆は視線を外して、騒がしい向こうの方へと目をやる。


「ここに守り手が居るのだろ」

「えっ」

相手の考えを読み、蓮は顔を引き攣らせる。

「”もう一度”会っておこうかと思うてな」

「マジかよ…」

「お前のように学校に紛れるなんてまねは出来ぬからな。今日は良き機会だ」

そう言うと、その場から歩き出す。

「今一度、見極めさせて貰おう」

お祭りの喧騒の只中へと向かっていく。


蓮は呼び止めることも出来ず、姿勢の良いその背を見送るだけ。

呼び止めても無駄だということを、誰よりも分かっていたから。

その相手が決して自分の意思を曲げない人物であることを知っていたから。


「はぁ」

柄にもなく、顔を曇らせて溜息を吐く。


吸えなかったタバコを咥え、火を点ける。

気分を落ちつかせるべく、深く深く煙を吸い込む。


「……どないしよ」

紫煙を吐き出しながら、青すぎる空を恨めしげに見上げた。



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