Fortunate Link―ツキの守り手―




そこは棚に様々な楽器が収まっている小さな部屋。

その中央にある机に俺はぽつりと一人座っていた。


おもむろに、机の上に一枚の真っ白な紙を広げる。

その紙の上にペンを走らせた。


『水波雅(偽物?)=クレハ(?)
日暮夕月=冴月=母さん』

そして紙に書かれたその二人を両矢印で結び、その上に「知り合い?」と書いておく。


「はぁ…」

俺はペンを放り、盛大に溜め息をついた。

残念ながら俺は凡人の頭の容量しか持ち合わせていない。
これ以上、ややこしい誰かが現れたら、間違いなく容量オーバーになる。

その時、廊下を誰かが走ってくる足音がした。

俺は慌てて机の上の紙をぐしゃぐしゃっと丸めた。

次の瞬間、ガラッと勢いよく扉が開いた。

「見つけたわよ!守谷くん!」

部屋に入ってきたのはクラスメイトの数人の女子。

「うわっ…なんでここがバレたんだ…」

「保険医の先生が守谷くんの居場所はここだって教えてくれたわ」

彼女達の言う保険医の先生が誰のことだかすぐに分かった。

(…夕月さん……何してくれてんだ)

手に握る紙をさらにぐしゃりと潰す。

「――さぁ。観念して来なさい」

ガシッと彼女達に両腕を掴まれる。

「ちょっ、離せって……いや、離してください、お願いだから」

とはいえ女子相手に手荒なことは出来ない。
あっという間に、潜伏先の吹奏楽部の準備室から無理矢理連行された。

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