Fortunate Link―ツキの守り手―
*
……嗚呼。
これは人生何度目の屈辱だろうか?
今までも色々あったけど、と過去を振り返る。
思い起こせば――、
昔、家族と一緒に行った海で、アカツキに海パンを剥ぎ取られ、半泣きで全裸で砂浜を走り回されたり。
川釣りに行ったときには、アカツキのぶん投げた釣竿の針がありえない事に俺の鼻の穴に引っ掛かったり。
最近では、乙女戦隊月影のイベントショーで全身タイツちっくな格好を公然と曝したり。
そんな事を思い出していたら、急にムラムラと壁に頭を打ちつけて記憶を抹消したい衝動に駆られ始めたので、思考する事を中断した。
今日は楽しい学園祭の日――ではなく。
何の因果か、女に化けなければいけない日なのだ。
先ほどまでこそこそ吹奏楽部の準備室に隠れていたのはその現実から逃げるためだった。
学園祭の名物行事――フォックス・ハント。
直訳すれば『キツネ狩り』
各クラスから男女一名ずつ選出し、男は女に、女は男に”化ける”。
要するに彼らが”キツネ”。
そして、俺は持ち前の運の悪さが災いして、そのクラス代表1名に選ばれてしまった。
こういう時、アカツキの運の良さが本気で羨ましくなる。
「でーきた!!」
顔や髪やら…とにかく散々いじくりまくられた挙句、演劇部の女子が高らかと言った。
こういうことになると俄然張り切りだすクラスの女子達が世話を焼いてくれた。
「いいじゃん!めちゃくちゃイイよ!」
かなり自信ありげに言う。
何だか顔中の肌がむず痒い。
「絶対ケバくされてる」と思いながら恐る恐る手渡された鏡を覗く。
「ほら♪いいでしょ!」
「…………」
仰天した。
女の俺が居た。
まぁそれは当たり前の事なのだけれど。
しかしそこには――、
何の”違和感なく”女の俺が存在していた。